私の小さい頃の話です。
その温泉は群馬県の吾妻渓谷にある川原湯温泉といいます。
とても静かな温泉街で、時には観光客が一杯で、
いつもの旅館の別館にご厄介になったこともあります。
山あいからの清流を利用しての虹鱒の釣堀。
魚を釣り上げるなんて、私には始めての経験でした。
さおを入れるとすぐに大きな虹鱒が釣れるんです。
そこのおかみさんはとても優しくて素敵な人でした。
時々、そちらで、昼ごはんをお願いして、いただいたこともあります。
私は魚が苦手なんですが、その虹鱒は美味しかった事を覚えています。
大人に混じっての平日の温泉旅行は子供には退屈でした。
散歩がてらに神社まで歩いていったり、
旅館のすぐ前のお土産屋さんで、遊ばせてもらったり、
もともと、田舎育ちなものですから、景色がいいことなどには
関心をもちませんでした。
ですが、父は違ったようでした。
父は渓谷の絵をたくさん買って、家の壁にぶら下げていました。
大人になって見るときれいな景色だったんだなあと
はじめて残念な思いがしました。
暑い夏場は木々の緑を揺らし、冷たい風が吹いてきます。
人々は皆、優しく、行きかう人に挨拶をしてくれます。
山の中には真っ白い大きなゆりの花が咲いています。
自然は豊かで、人は優しく、温泉の質もとてもいいのです。
病気がちな父はたびたび、そこへ行きました。
その温泉街は温泉街に必要なものの全てがありました。
蒸気を出す源泉、渓谷、下駄の音が響きあう細めの道。
土産物屋、地元産の季節の食事。
ここは長年のダム計画で、そろそろ、その時期が来たようなのです。
温泉街の皆さんが少しでもより良い方向へと向かうことを祈るばかりです。
朝日新聞に、この夏、川原湯温泉の特集記事が載っております。
こんな場所があることをどうか、知っていただければと思います。
リンクに、八ッ場ダムを考える会HPがあります。
そちらに特集記事が載っております。
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